何ておぞましい景色でしょう。このような場所が本当に私たちの暮らす地上に存在するなんて驚きだわ。

　みなさん、こんにちは。ドロシー・トンプソンです。

　いま私はヨーロッパのとある古城へ来ています。中世に建てられた頃とほとんど変わらない石造りの城の、陽も当たらない一室にいるの。うーわ、とっても不気味。

　頑張ってリポートするから、ラジオを聞いているみんなもちゃんと付いてきてちょうだいね。

　冷たい部屋の中央には大きなラックがあって革紐が何本も下がってる。これは人を縛り付けるための物のようだわ。向こうには大きな三角木馬と人体模型。そして、奥には拘束具の付いた椅子があって……背もたれからは何本ものケーブルが伸びていて部屋の隅にある大きな機械につながっているわね。……まさか、私の考えが正しければ電気椅子よ、これ！？

　待って落ち着いてドロシー。深呼吸して。はーふー、はーふー。

　壁に掛けられているのは何かしら……。鉄の鎖が付いた枷に、太い革製の鞭。何に使うのか想像もできないペンチやノコギリ。それに、いくつもの鉄仮面の形をした猿ぐつわがこっちを見下ろしているわ。

　さあ、そろそろみんなもわかったかしら？　そうよ。ここはね、かつて何百人もの人が命を奪われた恐ろしい拷問部屋なの。

　マシューったら、こんなところへ連れてこられてよく無事に脱出できたもんだわ。

　マシューとは、マシュー・ファレルのことかね？

　キャーーーッ！

　おいおい。幽霊を見るような顔をしないでくれ、お嬢さん。私はこの城の管理人、Dr.オーゲンだ。君からの電話を受けたね。

　い、いつからそこにいたの！？

　君が部屋に入ってくる前から。どうやら人体模型に見えたようだね。

　だってそんなミイラみたいに干からびた姿をして……。

　ゴホン！

　し、失礼しました、私が悪かったわ。ごめんなさい。つい恐怖でパニックになっちゃって。

　いいんだ。君のような有名なジャーナリストに取材に来てもらえて嬉しいよ。それに、短い時間で随分とこの部屋の魅力を理解してくれたようだ。

　あなたは、マシューと知り合いなの？

　知り合いも何も。彼とは幾度となく命のやり取りをしている仲さ。いつだって再会を楽しみにしているよ。

　も、もしや、私を拷問して彼の居場所を聞き出そうって魂胆じゃないわよね？

　ハッハッハ、安心したまえ。こう見えても私は紳士だ。仕事以外では尋問は行わない主義だよ。

　そ、それはよかった。帰ったらマシューに伝えておくわ、気をつけてって。

　ぜひ頼むよ。ミス・トンプソン。